「吃音(きつおん)」とは、話すときに言葉がつまったり、繰り返されたりする言語障害のひとつです。吃音には主に3つのタイプがあり、それぞれ「連声(れんせい)」「伸発(しんぱつ)」「難発(なんぱつ)」と呼ばれています。
この記事では、それぞれの吃音のタイプを「実際の話し方の例」を交えながら、わかりやすく解説します。吃音に関心のあるご家族や教育関係者、言語聴覚士を目指す方にも参考になる内容です。
吃音とは?まずは基本的な理解から
吃音とは、言葉をスムーズに話せない状態のことを指します。原因はひとつではなく、遺伝的要因や脳の働き、環境的な要因などが複雑に関係していると考えられています。
吃音は「一時的なもの」として幼児期に自然に治るケースもありますが、小学校以降まで続く場合は「発達性吃音」として専門的な支援が必要になることもあります。
吃音の特徴的な話し方は、大きく3つのタイプに分けられます。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
1. 連声(れんせい)タイプ|言葉の最初をくり返す
連声は、言葉の最初の音や音節を何度もくり返すタイプの吃音です。幼児や小学生に多く見られ、周囲にも比較的わかりやすい症状です。
話し方の例:「わ、わ、わたしは いぬが すきです」
このように、単語の最初の音「わ」が何度もくり返されます。本人は話そうとしているのに、うまく言葉が出ない状態に不安や焦りを感じることもあります。
連声タイプは、最も目立ちやすい吃音の一つであり、からかわれたり指摘されたりすることで、話すことへの自信を失ってしまうこともあるため、周囲の理解がとても重要です。
2. 伸発(しんぱつ)タイプ|音を引きのばして話す
伸発は、言葉の最初の音を長く引き伸ばすタイプの吃音です。これは「のばす」という意味から「伸発」と呼ばれます。
話し方の例:「すーーーしが すきです」
この場合、単語の頭の音「す」が長く引き伸ばされます。聞いている人は「何か意図があるのかな?」と感じることもありますが、本人にとっては言葉が出にくいために引き伸ばすことで調整しているのです。
伸発タイプの吃音は、一見すると緊張やゆっくり話しているように見えることもあり、誤解されることがあります。
3. 難発(なんぱつ)タイプ|言葉が出てこない
難発は、言葉の最初の音がなかなか出てこないタイプです。「ブロック型」とも呼ばれ、話し始めるときに声が詰まるのが特徴です。
話し方の例:「……(沈黙)……がっこうに いきました」
このように、最初の言葉が出るまでに時間がかかり、沈黙が生まれます。聞き手から見ると「考えているのかな?」と感じられるかもしれませんが、実際は「言いたくても出せない」状態です。
難発タイプは、本人の内面での苦しさが大きく、発語の前に強い緊張や不安を抱えていることも少なくありません。
3つのタイプは混在することもある
吃音の3つのタイプ(連声・伸発・難発)は、はっきりと分かれているわけではなく、複数が混在して現れることもよくあります。たとえば「こ、こーーーんにちは」のように、連声と伸発が組み合わさることもあります。
また、成長や環境の変化によって症状の現れ方が変わることもあるため、継続的な観察と支援が大切です。
吃音への対応とサポートのポイント
吃音がある子どもや大人に対して、周囲ができることはたくさんあります。大切なのは「否定しない」「急かさない」「話の中身を聞く」ことです。
- 話すスピードを合わせる
- 言い直しを強要しない
- 吃音をからかわない
- 「ゆっくりでいいよ」と安心感を与える
言語聴覚士などの専門職による支援も有効です。ことばのリズムを整える訓練や、話すことへの自信を育むアプローチなどが行われます。
まとめ|吃音のタイプを理解することが支援の第一歩
吃音には「連声」「伸発」「難発」という3つの主なタイプがあります。それぞれ話し方に特徴があり、本人が感じる困難さも異なります。
まずはどのようなタイプがあるのかを知り、本人の話し方をよく観察して理解することが支援の第一歩です。そして、吃音があっても自信をもって話せるような環境を作ることが、何より大切なのです。
吃音についてさらに詳しく知りたい方は、言語聴覚士や専門機関に相談してみてください。早期の理解とサポートが、本人の未来を大きく変えることにつながります。
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