「うちの子、文字に興味を持たないけど大丈夫かな?」
そんな不安を抱える保護者の方に知ってほしいのが「エマージェント・リテラシー」という考え方です。これは、子どもが読み書きを習う前の“準備段階”の力のこと。実はこの力が育っていないと、後々、読み書きに困難を抱える可能性があるのです。
この記事では、「エマージェント・リテラシーとは何か」「どうやって見抜けばいいのか」「育てるにはどうしたらいいのか」などを、専門的な視点も交えながらわかりやすく解説します。
エマージェント・リテラシーとは?
エマージェント(Emergent)=芽生え
リテラシー(Literacy)=読み書き能力
つまり、「読み書きができるようになる前の力」のことを指します。具体的には以下のような力が含まれます。
- 本に興味を持つ
- 文字に気づく
- 言葉のリズムや音に敏感になる
- 語彙が増える
- お話を聞いて内容を理解する力
これらはすべて、後の読解力や書字力に直結します。言い換えれば、エマージェント・リテラシーは「読み書きの土台」なのです。
エマージェント・リテラシーが育たないとどうなる?
この力が十分に育たないまま小学校に入学すると、以下のようなつまずきが起こることがあります。
- 音読がスムーズにできない
- 文字を音に変換するのに時間がかかる
- 単語をうまく書けない
- 読んだ内容を理解できない
これらの症状は、ディスレクシア(読みの障害)やディスグラフィア(書字の障害)などの「読み書き障害(学習障害の一種)」に関連している可能性があります。
読み書き障害との関係
読み書き障害は、知的な発達には問題がなくても、「読み」や「書き」の習得に特異的な困難を持つ状態を指します。その原因の一つとして、幼児期におけるエマージェント・リテラシーの不足が挙げられています。
どんな子がエマージェント・リテラシーに弱さが出やすい?
以下のような傾向が見られる子どもは、エマージェント・リテラシーの育ちが弱い可能性があります。
- 絵本の読み聞かせに集中できない
- 物語を最後まで聞くのが苦手
- 音遊び(しりとりや言葉あそび)を嫌がる
- 文字に興味を示さない
- 単語や名前を覚えるのが苦手
こうした傾向が複数見られる場合、読み書き障害のリスクを考慮し、早めに専門家へ相談するのがおすすめです。
エマージェント・リテラシーはどうやって育てるの?
心配はいりません。エマージェント・リテラシーは、家庭でのちょっとした働きかけで育てることができます。たとえば…
① 絵本の読み聞かせ
声に出して読むことで、言葉のリズムや構造に自然に触れることができます。読み終わった後、「どう思った?」「だれが出てきたかな?」と会話するのも効果的です。
② 音あそびやしりとり
音を聞いて、操作する力は、後の音韻認識(おんいんにんしき)につながります。これは、文字を音に変換する力の基盤です。
③ 名前や看板を読む習慣
「ママの“ま”はこれだね」「コンビニの“セブン”って書いてあるね」と、文字に気づかせる声かけも大切です。
まとめ:エマージェント・リテラシーが「読み書きの芽」を育てる
「うちの子はまだ字を読めないから…」と思っていても、実はその前の段階から読み書きは始まっています。エマージェント・リテラシーは、言葉の土台となる大切な力。これがしっかり育っていれば、小学校での学びにもスムーズに入っていけます。
もし気になることがあれば、早めに保育士さんや言語聴覚士などの専門職に相談することをおすすめします。
読み書きの力は、一朝一夕で身につくものではありません。
でも、親のちょっとした関わりで、その芽を大きく育てることはできます。
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