「うちの子、しゃべり方がちょっと変?」「“さかな”が“たかな”になってる…」そんなとき、気になるのが「構音障害」という言葉。でも、「ただ活舌が悪いだけでは?」と思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、構音障害とは何か、活舌との違い、原因や改善の方法、専門的な視点も含めた発音の仕組みについて分かりやすく紹介します。
活舌が悪い ≠ 構音障害
「活舌が悪い」は日常的に使われる言葉で、話し言葉が聞き取りにくい状態全般を指します。その原因は、滑舌・発音・スピーチの速さ・緊張など様々です。
一方、「構音障害(こうおんしょうがい)」は専門的な用語で、音を正しく発音するための動作に困難がある状態を指します。
▶定義(専門的には)
構音障害とは、「発語器官の運動制御の未熟さや障害により、音声言語の個々の音(音素)を正しく形成・産出できない状態」(日本言語聴覚士協会より)
簡単にいえば、「発音のルールに従って音を作るのがうまくいかない」という状態です。
よくある発音の誤りと分類
構音障害は以下のように分類されます。
■ 構音の誤りのタイプ
タイプ | 内容 | 例 |
---|---|---|
置換 | 他の音に言いかえる | 「さかな」→「たかな」 |
省略 | 音が抜ける | 「くつ」→「くっ」 |
歪み | 正しい音ではないが、似た音になる | 「し」が舌たらずな音になる |
添加 | 余計な音が入る | 「すいか」→「すういか」 |
このような発音の間違いが発達的に見られる時期を過ぎても続く場合、構音障害として評価・支援の対象になります。
なぜ構音障害が起きるの?
構音障害の原因は以下の3つに大きく分けられます。
1. 機能性構音障害(最も多い)
- 器質や神経に異常はないが、舌や唇の使い方が未熟なため発音が誤る
- 多くは成長や指導で改善が可能
2. 器質性構音障害
- 口蓋裂や舌小帯短縮症など、口腔器官そのものに構造的な問題がある場合
- 医療的対応(手術や装具)+ことばの訓練が必要になることも
3. 運動障害性構音障害(ディスアースリア)
- 脳性まひなどで筋肉の緊張や運動コントロールに問題があるケース
- 発音だけでなく、声や話す速さにも影響が出る
何歳までに発音が整うのが目安?
子どもの発音は徐々に発達します。
例えば、日本語の発音獲得の順序には次のような傾向があります。
年齢 | 獲得しやすい音 |
---|---|
2〜3歳 | マ行、バ行、パ行、ア行など |
4歳頃 | カ行、タ行、ナ行など |
5歳頃 | サ行、ガ行、ラ行など(難しい音) |
5〜6歳になってもサ行やラ行の誤りが続く場合、専門的な評価が勧められます。
構音障害の評価と支援
構音障害が疑われる場合、言語聴覚士(ST)による評価を受けることが勧められます。
評価方法(例):
- 単語や文章を読ませて誤音の有無を確認
- 発音器官の動き(舌の動かし方・息の出し方)の観察
- 聴力検査、構音検査(アーティキュレーションテスト)
支援内容:
- 正しい舌や唇の使い方をわかりやすく指導
- 音の聞き分けや模倣の練習
- 遊びやゲーム形式での発音練習
改善の例:練習で治ったケースも多い
ある小学生の事例を紹介します(実際の臨床経験に基づく例を一般化しています):
小学1年生の男の子。「さかな」が「たかな」、「しんぶん」が「ちんぶん」となる発音の置換がありました。月に2〜3回、言語訓練を受け、半年〜1年ほどで誤りが減少。自信を持って発言できるようになり、学級活動や友達との会話も活発になったそうです。
まとめ:発音の気になる子を責めないで
構音障害は、「ただの甘え」「しゃべり方が変」と片付けるべきではありません。
正しい発音の仕方は、学び直すことで身につけられるスキルです。
また、「障害」という言葉に不安を感じる方もいるかもしれませんが、適切な支援によって改善することが多いということも知っておいてください。
最後に:心配なときは早めに専門機関へ
「まだ幼いから」「いつかなおるかも」と見守ることも大切ですが、言葉の習得には“適切なタイミングでの支援”が効果的です。
気になる場合は、地域の「ことばの教室」や「言語聴覚士」に相談してみましょう。
早めの一歩が、子ども自身の自信にもつながります。
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