「様子を見ましょう」の落とし穴―相談のタイミングを逃さないコツ

ことば支援

子どもの言葉の発達が気になったとき、保護者の方が最初に耳にするのが「様子を見ましょう」という言葉かもしれません。実はこの一言には、大きな落とし穴が潜んでいることもあります。今回は、相談のベストタイミングや、「様子を見る」ときに気をつけたいポイントについて、言語聴覚士を目指す立場からお伝えします。


なぜ「様子を見ましょう」と言われるのか?

発達には個人差があるという前提

子どもの発達は十人十色。言葉の発達も例外ではありません。「2歳なのに単語が出ない」「3歳になっても文章を話さない」といった相談に対し、専門家や保育士さんが「個人差の範囲かもしれません。もう少し様子を見ましょう」と答えるのは、一見すると自然な対応です。

確かに、成長のペースにはばらつきがあります。一時的に言葉が遅くても、突然言葉が増え始める子もいます。しかし、「様子を見よう」という判断が、その後の支援の遅れにつながるリスクもあるのです。


「様子を見る」ことが危険になる3つのケース

① 気づかないうちに半年、1年と時間が過ぎてしまう

「様子を見る」と決めた結果、再度の相談をするタイミングを逃してしまうことがあります。忙しい日常のなかで、「そのうち話すかな」と思っているうちに、あっという間に数か月が過ぎてしまう…。これはよくあるケースです。

② 本当は支援が必要なのに、見逃してしまう

言語発達遅滞、構音障害、吃音など、早めに支援を始めることで改善が期待できるケースも多くあります。しかし「まだ小さいから大丈夫」と放置してしまうと、後々、本人が集団生活や学習の場面で困難を感じることもあります。

③ 親の不安が膨らみ、焦りや自己否定につながる

「やっぱり相談しておけばよかったのでは?」という後悔は、保護者の心にも大きな負担となります。周囲の子と比べて焦ったり、「ちゃんと育てられていないのでは」と自分を責めてしまったり…。不安を抱え続けることが一番つらいのです。


相談のタイミングを逃さないための3つのコツ

① 気になることは「小さなこと」でもメモに残す

言葉の出方や発音の様子など、日常の中で「あれ?」と思ったことは、スマホのメモなどに残しておきましょう。「2歳2か月:まだ単語が出ない」「3歳0か月:『さかな』を『たかな』と言う」など、時系列で記録しておくと、後の相談時にとても役立ちます。

② 相談先を早めに調べておく

言語に関する相談は、市区町村の保健センター、発達支援センター、小児科、言語聴覚士のいる療育施設などが窓口になります。どこに相談すればいいか分からないまま時間が経ってしまうことも多いので、気になる時点で調べておくのがおすすめです。

③ 「相談=診断」ではないと知っておく

相談することに「診断されてしまったらどうしよう」「発達障害だと言われるのでは」と不安を感じる方もいます。でも、相談は“確認”であり、“サポートを受ける準備”でもあります。すぐに何かを決めるわけではありません。「ちょっと聞いてみる」くらいの気軽さで大丈夫です。


専門家のサポートは“早すぎる”ことはない

言語の発達に関する支援は、早期に始めることで大きな効果が期待できるものです。特に、3歳前後までに支援が始まると、その後の伸びも良くなる傾向があります。

また、言語聴覚士や心理士などの専門家は、親が見落としやすい点をプロの目でチェックしてくれます。「気のせいかもしれないけど…」と思っても、気軽に相談することが、子どもの未来につながる第一歩になるのです。


「様子を見る」は、あくまでも“経過観察の一手段”

「様子を見ましょう」という言葉自体が悪いわけではありません。ただし、その意味をきちんと理解しておくことが大切です。何を見て、どれくらい見て、どうなったら再相談するのか?という視点がないと、ただの“放置”になってしまう可能性があります。


まとめ:迷ったら、相談する勇気を

子どもの発達は、親にとってとても大きな関心事。だからこそ、「ちょっとでも気になることがあれば、相談していい」と思える社会や情報が必要です。様子を見るのも大切ですが、一人で悩み続ける前に、専門家の意見を聞くことが何よりの安心につながります。

「相談してよかった」と思える日が、きっと来ます。

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管理人
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私は言語聴覚士を目指している現役大学生です。
言葉やコミュニケーションに関する情報をわかりやすく発信していきます。
このブログを通じて、皆さんの悩みの解決に少しでも貢献し、「ことばを通じて、より良い生活を送るお手伝い」ができれば幸いです。

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