「ハビリテーション(habilitation)」という言葉を聞いたことがありますか?医療や福祉の現場では一般的に使われている専門用語ですが、リハビリテーションに比べてまだまだ認知度は低いかもしれません。
本記事では、ハビリテーションの意味、対象となる人、リハビリテーションとの違い、そしてその重要性について、深くわかりやすく解説していきます。
ハビリテーションとは?
ハビリテーションとは、本来身につくべき能力が、何らかの理由で身についていない人に対して行う支援や訓練のことを指します。
たとえば、発達に遅れがある子どもや、先天的な障害をもつ人たちが、社会生活を営むために必要な動作・言語・認知機能などを獲得していくためのサポートが該当します。
語源はラテン語の「habilis(できる)」から来ており、「できるようにするための支援」が基本的な概念です。
リハビリテーションとの違い
「ハビリテーション」とよく比較されるのが「リハビリテーション(rehabilitation)」です。
リハビリは、すでに獲得していた機能が病気やけがによって失われたときに、それを取り戻すための支援を指します。
用語 | 対象 | 目的 |
---|---|---|
ハビリテーション | 未発達の機能 | 獲得を支援する |
リハビリテーション | 失われた機能 | 回復を支援する |
たとえば、脳性まひの子どもが歩く練習をするのはハビリテーション。
脳卒中後に歩行訓練をするのはリハビリテーションというイメージです。
👉 リハビリテーションの詳しい内容はこちらの記事で解説しています:
ハビリテーションが必要となるケース
ハビリテーションの対象となるのは、主に発達段階で困難を抱える人たちです。たとえば:
- 発達障害や知的障害をもつ子ども
- ことばの発達が遅れている幼児
- 運動発達に遅れがある乳幼児
- 聴覚や視覚に障害を持つ人
これらの人々に対し、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士、教師、保育士などが連携して支援にあたります。
なぜハビリテーションは重要なのか?
ハビリテーションは、単に機能を「教える」だけではなく、その人が社会の中で自分らしく生きていく力を育てることが目的です。
幼少期に適切な支援を受けることで、その後の学習・就労・対人関係の土台が形成され、生活の質(QOL)を大きく左右することもあります。
また、早期介入によって、後々の二次障害(たとえば自己肯定感の低下や社会的孤立)を防ぐことにもつながります。
ハビリテーションの具体例
具体的な支援内容としては、以下のようなものがあります:
- 【言語】ことばの理解や発話を促す訓練(言語聴覚士による支援)
- 【運動】歩行や姿勢の保持などを学ぶ(理学療法士による支援)
- 【日常生活動作】着替えや食事の練習(作業療法士による支援)
- 【コミュニケーション】意思表示の方法や社会的ルールを学ぶ支援
- 【家族支援】家庭での関わり方や環境調整のアドバイス
まとめ|ハビリテーションは“できる”を育てる支援
ハビリテーションは、「今はまだできないけれど、将来的にはできるようになるかもしれない」可能性を信じ、その人の力を引き出す支援です。
リハビリと混同されがちですが、意味や対象は大きく異なります。
発達や障害に関心がある方、支援者、保護者の方はぜひ、ハビリテーションの視点からその人の発達を考えることを意識してみてください。
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