幼少期から英語を学ぶと日本語の発達に悪影響?バイリンガル教育のメリット・デメリットを言語発達の観点から解説

言語発達

「英語は早いうちに始めたほうがいい」とよく聞きますが、本当にそれは子どもの言語発達にとって良いことなのでしょうか?
最近では英語教育の低年齢化が進み、0〜6歳のうちから英語に触れさせる家庭も増えています。
しかし、幼少期からの英語教育が日本語の発達にどんな影響を与えるかについては、慎重に考える必要があります。

この記事では、研究データや具体例を交えながら、早期英語教育が言語発達に与えるメリット・デメリットをわかりやすく解説します。


幼少期からの英語教育のメリット

● 認知機能の向上

バイリンガルの子どもは、複数の言語を切り替えて使うことで、注意力・記憶力・思考の柔軟性などが育つとされています。
Bialystok(2001)の研究によると、言語の切り替えを行うことで、脳の「実行機能」が強化されると報告されています。

● 発音習得がしやすい

幼児期は音の聞き取り能力が高く、英語特有の発音(たとえば「L」と「R」の違いなど)も、ネイティブに近い形で身につけやすいといわれています。
これは「臨界期仮説」と呼ばれ、5〜6歳ごろまでに英語に触れることで、音声習得の面で優位に立てる可能性があるとされています。


一方で考えたいデメリットや注意点

● 日本語の発達が遅れるケースも

国立国語研究所(2012年)の調査によると、英語と日本語を並行して学んでいる子どもに、日本語の語彙や文構造の発達が遅れている例が見られました。
とくに、日常会話レベルでは問題がなくても、抽象語・論理的表現などが乏しくなる傾向があると言われています。

● セミリンガル(中途半端な言語習得)になるリスク

どちらの言語も年齢相応に使いこなせない「セミリンガル」状態になると、自己表現や学習能力にも影響が出る可能性があります。
母語の基礎が不安定なまま第二言語に偏ると、言語的・社会的発達のバランスが崩れることがあります。


言語発達を支える“バランスのよい”英語教育を

言語発達の観点からは、母語(日本語)の発達がすべての土台になります。
第二言語習得理論(Cummins, 1981)でも、母語の力が強いほど、第二言語の習得もスムーズになるとされています。

【事例】ある保育園の取り組み

英語教育を導入した保育園では、「英語は理解しているのに、日本語で感情を表現できない」という子どもが数名いたという報告もあります。
その背景には、日本語の語りかけや絵本の時間が減ってしまったことがあったそうです。


日本語の発達を守りながら英語を学ぶためのポイント

  • 日常会話を日本語でたっぷりと行う
    感情表現や理由説明などを日本語でやり取りすることで、語彙と文の構造が育ちます。
  • 英語は“楽しい体験”として取り入れる
    絵本・歌・アニメなど、無理なく自然に英語に触れる環境をつくりましょう。
  • 発達段階を見ながらバランスを調整
    日本語の理解や語彙が不十分な場合は、英語よりも日本語を優先したほうが安心です。

まとめ|子どものことばの力を育てるために大切なこと

幼少期の英語教育にはたしかに多くのメリットがありますが、「母語の発達を犠牲にしてまで」行うものではありません
英語を学ぶこと自体は素晴らしい体験ですが、それ以上に、自分の気持ちを自分の言葉で表現する力を育てることが何より大切です。

バイリンガル育児に迷ったときは、子どもの言語発達をしっかり観察しながら、「ちょうどいい英語とのつきあい方」を模索してみてください。


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私は言語聴覚士を目指している現役大学生です。
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